2009.02.05

ちょっと仕事の依頼を受けて、超ベテラン画伯、武内ヒロクニ氏を訪ねた。
「ヒロクニさん、生まれは?」
「いや、俺は昭和13年やと思っとったんやけど、S(細君、僕と同世代)は12年やと言うんや」
とにかく何を訊いても予想通りの答えが返って来ることはない。こんなに面白い人は他に知らないし、知り合えただけでも「得した」気分だ。話し出すと止まることを知らず。彼の話の中には、必ず大勢の人名がぞろぞろ出て来る。ロックミュージシャン、文学者、哲学者、画商、そして同世代とその前後の美術作家たち。僕はそのほとんどに聞き覚えがなくて、しかもその内容もあまりはっきり意味はわからない。でも、そんなことはわりとどうでも良くて、ただニュアンスだけで聞いていて、そして、その時代や空気を思い浮かべながら、結局、ずっと一貫して変わらないのは、このヒロクニ氏だけなのだと知る。
同行したMが「ヒロクニ先生」と呼ぶと「いや、先生じゃなくて、ヒロちゃんで……」本気か!冗談か? しかし本当にヒロちゃんと呼べてしまいそうな氏であった。どはずれた純粋さを持つ俗物、けっこうカッコいい。作品、観るべし。

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