2006.10.31

シュークリームを見つけた。それはスーパーのアイスクリームのケースにあった。間違った場所で冷凍されていた。か、あるいは、冷凍されようとしていた。これも出会いというものか。シュークリームなんか要らないのだが、どうしてもその、アイスクリームの上に無造作にほうり投げられたシュークリームが食べたくなった。当然誰にもわかることだが、それは別のお客さんが「やっぱりシュークリーム要らね」と言って、ただ、シュークリームの棚まで戻るのが億劫でそこにほったらかしにしたもの。あらまあ、奇遇だこと。そんな出会いは、一生に二度もないかも知れないじゃーあーりませんか。なわけで、スーパーのどうでもいいようなカゴに入れ、レジに持っていった。他のものもいろいろ入れていたのだが、レジの女性曰く、
「ドライアイスはご入り用ですか?」
「え?」
僕はかなり面食らって訊き返す。実はちゃんと聞こえていたのだが、ドライアイスが必要なものなんか入れた憶えがないので、それを自分の頭の最高速でしゅびびと確認した。
「ドライアイスはご入り用ですか?」
女性がそう訊きなおすまでに、ちゃんと間に合った。勝利。
「いえ」
そう答えるとき、僕は少し得意げだったかも。しかし、ではなぜ彼女はそんなことを訊いたのか。まさか、アイスクリームのケースからシュークリームを取りだしたのを見ていたとか。悪いこともしてないのに、なぜか変な汗をかく。シュークリームは店を出るとすぐに、車の中で食べた。でなきゃ意味ないやんか。端の方は凍っているかも、いや、かなり硬くシューアイスのようになっているかも知れん。そう思いながら食べたものは、冷たかった。ただ、冷たかった。
おわり。

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