2008.12.9

先日、Mの展覧会会場にいたら色が黒くて彫りの深いオトコマエが現れた。一目見て、後日ここで演奏するインド人ミュージシャンだとわかる。写真を見ていたからね。機材を前もって運びに来たらしい。ボーと立ってたら「彼もミュージシャンだ」と紹介されてしまった。わりとこういうの面倒くさい性分ながら「楽器は何をやるのか」と英語で訊かれたので「ドラムをプレイする」と答えると、最初からテンション高めだった彼の目がさらに輝きを増して「じゃあ、ぜひ演奏を観に来てくれ」と言い出した。
「タブラを知ってるか?」
「少しだけ……」
「君のドラムはスティックでプレイするのか?全然違うからぜひ聴いて欲しい!」
そうか、彼の楽器はタブラ(インドのドラム、というか打楽器)だった。たしかに非常に興味はある。インドの楽器でシタールと同じくらい興味があるのがタブラだった。あの音を生で聴きたいと思った。

今日は彼のライブ。ほとんど行く気がなかったはずが、当然来たという気分で演奏を迎える。何にでもきっかけというのはあるね。演奏はタブラとサントゥールの二人だけ。彼の演奏は素晴らしいだけでなく、凄まじかった。もっとゆったりした音楽を想像していたが、実際には山を登るようにエキサイトしていき、とても胡座をかいて座っているたった二人の演奏とは思えないほど白熱した。

「very comfortable」と言うと、日本語で「そうね」と応えた。これが逆だったら、英語で「そうね」はなんと言うのかと、ちょっと考えてしまった。はは。またコラボレートしましょう、などと言われたが、笑って頷くしかなかったよ。僕の演奏はドラムとして独立したモノじゃない。

インド音楽はこのときの演奏を聴いただけでも深いとわかる。のめり込む人がいるのも理解できる。ただ、彼は自分が生まれた土地の音楽をやっているのだ。僕は神戸の舞子に生まれた日本人なんだな。

後でタブラを触らせてもらったが、真似をしてみても音すら出なかった。彼の手の指先は、カチカチに固まって一部割れて血がにじんでいた。

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