2011.3.28

昨日。
ポンピドーセンター前の広場では、大道芸人などがそれぞれ得意なことをアピールしているが、その中にひときわ地味に異彩を放つ二人。どうみてもどこかのとてつもない田舎から出て来た老夫婦。商品として流通したのか自作なのか、それすら微妙な同じ弦楽器をひとつずつ、ぺたりと座って伸ばした足の上に立て、ただひたすら弾き続けるが、あきらかにアドリブで展開がない。老女は短い同じパターンをひたすら繰り返し、老父はそこに少し変化はあるが、同じフレーズの順列組み合わせをやはり繰り返してかぶせる。
本当に素晴らしいものとの出会いは、必ず予想外のタイミングで訪れる。二度とは出会うことがないと思えるこの音楽を、あわててiPhoneで録音を始めると、すぐそばでやはり携帯用の録音機器で録る女性に気づいた。わかる人にはわかる。
僕が本当に求めている音楽というのはこういうものであって、決して商業になるようなものじゃない。それにここで出会ったこと。それが本当に存在したことは、僕には大きい。今後生きていくための糧というのは、こういうもののことなのだな。

センターのギャラリーには、多くのピカソ作品が。ピカソは多作なので、あちこちで出会うことは多いが、ハズレがないのが特徴というか、とにかくあれ程の大天才ならではのものを、いつも見せてくれるので、こちらも得るものが多い。マチスの作品に、はぁ、これってこんな色だったのか、などと感じながら、次へ次へと行くと、敬愛するボナールの作品が4点だけあった。絵というのは、言葉などで説明が出来ないものを表現するために描くのだが、ボナールの作品はまさにその王道。自らの作品を説明しようと躍起になっている人たちに観て欲しい。芸術の本質のひとつがここにある。

今日はモンマルトルで面白い人に出会った。芸術は現実の人の生活とどう関わっていくのか。そんな問題提起を受けた感じ。いろいろ刺激はある。

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