Kは生まれた直後から、会う人会う人に「かわいい、かわいい」と、
本当にチヤホヤされて来た。
「かわいい」と言いながら実は驚愕している、という人がときどき混じる。
それくらい「かわいい」と言われ続けながら育ったので、
チヤホヤされ過ぎで、性格がおかしくなっちゃうんじゃないかと、
心配したぐらいだったが、
当の本人は「自分はよくかわいいと言われる」とはっきり自覚しながら、
まったく気にもかけないという、これまたおかしなやつだった。
そんな彼も、前歯が生え変わった時点でイメージが変わり、
「かわいい」などとは言われなくなったが、年齢的なものもあったのかも。
攻撃的な部分とマイナスの思考をほぼ持たないという、
ちょっと珍しいキャラクターは、
どこへ行っても必ず友達を作って来るし、
あちこちで物をもらったり、高価なものを拾ったり、
福引きみたいなものでは必ず何か当てたりと、
不思議な運も持っている。
昨夜、Kは翌日に迫ったクリスマスマーケットについて、
「売れるかなあ」とめずらしく弱気なことを吐いた。
「さあな」
「大失敗っていうこともあるよな」
常に良いことしか考えない性格が、このときは少し揺らいでいた。
「そうやとしても、それはそれやな」と僕。
「うん」このあたりの受け取り方はいつも通り。
彼は、作った折り紙が芸術協会長の目に留まり、
急遽マーケットに参加することになっていた。
僕は、とにかく自分の力でやり尽くし、
経験することのみが彼の大きなステップになると思っていた。
見守るしかない。
で、フタを開けてみればこれがとんでもない大好評。
Kは売りながらも新しいのを作り続けたが、
一時は商品が足りなくなるかというところまで来た。
彼はもうホクホクだ。
そこまで折り紙というものが、
デンマークの人たちに興味を持ってもらえたということも意外だった。
だって日本ではあったりまえのモノだもん。
Kの学校の先生や、Tの幼稚園の先生まで来て、
みんなそれぞれ買ってくれ、
さらに新しい「鶴」を10羽折って月曜日に学校へ持っていくことに。
こういうことがなにか新しい体験や挑戦に繋がらないかと、
常に期待しながらバックアップして来たが、
今日は、前から好きだった折り紙を披露することで、
本当に明らかな新しい成果を得た日になった。
蛇足だが、売り上げは約400クローネ。
75個ほど売れた計算らしい。
日本円で約6,000円。
中学一年生は笑いが止まらんはずだわ。
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